眠りの科学とワタシの生活

睡眠関係のネタを、睡眠の専門医である2児のママが書いてます。

主婦向け雑誌サンキュ!のひそやかな正しさ

「ていねいな暮らし」に対する関心が限りなく低いわたしが、主婦雑誌「サンキュ!」(2015年11月号)を買ってみましたよ。

わたしにとって、家とは、暮らすのに必要な広さと機能があれば、十分なもの(インテリア、何それ?)。
料理とは、バランスよく栄養を摂ることが最優先であるべきもの(両親も親友も夫もみんな器好きなのに、なぜか影響されず…)。
家計簿も、まったくつけなくなってから、はや数年。

なのになぜ、節約とレシピと素敵な家の記事が満載の「サンキュ!」を買ってみたかって?
何か、このブログのヒントになるようなことをつかめればと思ったからです。
「サンキュ!」を買う人と、このブログの想定読者の年齢層はかぶるので、何か、情報を上手に伝えるためのヒントが、この「20代・30代・40代の女性に実売No.1」(と、表紙にあった)の雑誌に入っているのではないかと…!

いや、でも、そんな思惑おいといて、そもそも女性向けの雑誌を読むのが久しぶりなんで、ちょっとウキウキしますね。
特集されていたサンマのおかずは、実際に作ってみようと思う。
だけど、片付けと節約の記事は、どちらもわたしにはレベルが高すぎて、読むだけで顔面蒼白になりそうです。
主婦ってのも、極めれば職人芸になるらしいと、今ごろ気がついた。

さて、睡眠の話です。
「サンキュ!」の全記事に目を通しているうちに、わたしはあることに気がつきました。
記事から見え隠れする、「サンキュ!」の読者(あるいは編集)の、睡眠に対する価値観が、なにげにまっとうなものであることに。

世の中では、まだまだ、「睡眠時間を削ってがんばっている」ということが、あたかも良いことであるかのように語られていることは少なくないんてすよね。
一般論レベルでなら、Webとか雑誌とか新聞とかほとんどの媒体が、「睡眠時間を確保しよう」と言うようになってきた印象があるけれど。成功している人へのインタビューなんかの個人レベルだと、まだ、睡眠時間を削ることは美徳とされる傾向があるように感じます。

「サンキュ!」には、それがなかった。
実例を見てみましょう。

以下の引用は、いずれも、雑誌に特集されていた読者代表の人の生活に関するものです。それぞれ別の人。

「朝6時に起きて、夜21時に寝るまでフル回転の毎日(後略)」(p.43)
(※ つまり、フル回転の忙しさであっても、毎日9時間睡眠を確保しているってことですよ!)

「(前略)育休を終えて職場復帰したものの、時間に追われてやりくりどころではありませんでした。そこで見直したのが、『時間使い』と『暮らしの優先順位』の2つ。効率よく動けるように時間配分を考え、『食と睡眠』以外のことに手間もお金もかけないことにしました」(p.59。太字は引用者)
(※ この人は、9時半就寝、4時45分起床だそうです。毎日7時間15分、寝床に入る時間を確保しているということですね)

いやー、素晴らしい。何がって、この多忙な人たちが睡眠時間はきちっと確保していることに関して、それが当然のことであるかのように、特段のツッコミもなく記事に扱われているところが。

 「忙しくても睡眠時間はなるべく7時間以上は取りましょう」(※個人的にはそう考えてます)と言うのは簡単。でも、そういう「何々すべき」っていうメッセージって、反発を感じさせちゃって、すんなりと入っていかないことも多いわけです。

でも、「この人たちは忙しくてもちゃんと睡眠を大事にしているんだよね」ということを、その人にまつわる情報の一部としてさりげなく提示するだけなら、押しつけがましくないですよね。だけど、読む人にとっては、「○○さんも××さんも、睡眠を大事にしているんだな」と、刷り込まれるわけです。それがいつしか、「じゃあ自分もちゃんと寝よう」と、影響を及ぼすようになる…かもしれない。

そういう、「睡眠は大事だよー」というメッセージを、「実売No.1」たる「サンキュ!」が、さりげなく、ひそやかに発していることを大変心強く思ったのでした。

来月はまた別の女性向け雑誌を買ってみたいと思います。どんなことが書かれているか、今から楽しみ…!