眠りの科学とワタシの生活

睡眠関係のネタを、睡眠の専門医である2児のママが書いてます。

なぜ布団の中で読書をしてはいけないのか

難しい本を読んでいるうちに、ついウトウトしてしまった経験は、多くの人があるのではないでしょうか。寝る前のリラックスタイムや、寝られない夜に本を読むことは、けっこうおすすめです。
夜に読むには、「読まなきゃいけないけれどあまり楽しくはない」本で、かつ仕事と無関係のものがよろしいかと思います。もし、読書で眠くなることに失敗してしまったとしても、「読まなきゃいけない」本をその分読み進められているわけで、損のない展開です。
なお、ページをめくる手が止まらないくらいおもしろい本は、かえって眠れなくなるおそれが高いので、そういう本を選ばないように気をつけましょう…!

さらに気をつけた方が良いのは、布団やベッドなどの、寝床の中では、本を読まない方が良いということです。
読書にかぎりません。
テレビを見るのも、
手紙を書くのも、
勉強するのも、
眠りの悩みがある人は、寝床の中ではやめましょう。

なぜでしょうか?

条件反射、という言葉があります。
パブロフの犬の実験はご存じでしょうか。パブロフ博士が、犬にエサを与えるとき必ずベルを鳴らすようにしていたら、エサのない状態でも、ベルを鳴らすと犬がよだれをたらすようになったという話です。
すなわち、この犬では、ベルの音という刺激によって、ヨダレという体の反応が自動的に引き起こされるようになったのですね。

夜、眠れない人においても、実はこの条件反射が起こっています。

いつも寝床でよく眠れている人だと、しらずしらず、「寝床」と「よい眠り」が結びついています。

しかし、寝床の中で、「眠る」以外の行動……つまり、「読書する」「テレビを見る」「電話する」など、を行っていると、睡眠以外の行動と、寝床が関連づけられてしまいます。そうすると、寝床に入った時に、眠気が来にくくなってきます。

不眠症で悩んでいる人だと、さらに、「寝床の中にいるのに眠れない」という苦痛が寝床と結びついてしまいます。そして、ベルが鳴るだけでヨダレが出るパブロフの犬のごとく、寝床に入る度に眠れない苦痛が自動的によみがえって来るようになるのです。その結果、当然、さらに寝られなくなる、という悪循環を生じるようになります。

ぐっすり眠るためには、「眠る」以外の行動は、寝床の中で極力しないようにしましょう。
横になってテレビを見たいならば、いつも寝る寝床ではなく、ソファで。
寝室で本を読みたいなら、布団の外で。
眠れなくてつらいときは、30分をめどに寝床から、できれば寝室からも出て過ごしましょう。