眠りの科学とワタシの生活

睡眠関係のネタを、睡眠の専門医である2児のママが書いてます。

あなたの睡眠時間、人に影響されていない? 最適な睡眠時間は人それぞれなのです

最適な睡眠時間って、人それぞれ違います。
 
大人だといちおう、7時間台の睡眠を取る人がいちばん健康的である、とする研究報告がいろいろあります。でもこれに基づいて「じゃあわたしも7時間睡眠にしよう」とか言うのは、正しくないんです。 
 
それって、たとえていうなら「体重64kgが理想的だから、みんな体重64kgを目指そう」と言っているようなもの。64kgは、日本人男性として平均的な身長170cmの人にとってはちょうど良い体重です。でも、身長145cmの人が64kgだったら太りすぎだし、身長195cmの人が64kgだったらやせすぎです。
 
同じように、7時間睡眠だと長すぎる人もいるし、短すぎる人もいます。7時間睡眠が一番良いというのは、あくまで、何千人、何万人と集めると7時間睡眠が適している人が最も多いという話であって、いま、この文章を読んでいるあなたとか、わたしとか、そういう一人一人の理想の睡眠時間を決める上では残念ながらあまり役に立ちません。
 
だから、周りの人の睡眠時間に引きずられて自分や自分の子どもの睡眠時間を決めるのって、あまり好ましくないんです。同僚が毎日4時間半睡眠で優秀な業績を上げているからって、あなたも4時間半睡眠で同じように元気だとは限らない。子どもの友人がみんな6時間睡眠で勉強も部活も頑張っているからって、自分の子どももうまくいくとは限らない。
 
ときどき、「短時間睡眠でも人生うまくいっている! 長く寝るなんて人生のムダ遣いだ!」的に煽る人を見かけますが、それは、たまたまその人の体質が短時間睡眠に適していただけという可能性が高いので、下手に鵜呑みにしないことがよろしいかと。
論文のデータを持ち出して、「週末にふつうに眠れば平日に短時間睡眠でも大丈夫」と言った人もいますが、そういう生活を長期間行ったときの注意力や健康度への影響に関するデータは、その人は示していないし、わたしが知る限りでもありません。
 
睡眠時間を削ることすべてが悪いと言い切る気はありません。睡眠時間を削ってでもやらなきゃいけないことが生じる場合って、そりゃあることでしょう。そのお陰で社会が発展し、栄えてきたとさえ言えるかもしれません。睡眠不足に対してかなりアンチな立場のわたしですら、赤ん坊の授乳とか子どもの世話で自分が寝不足になることは甘んじて受け入れています。
 
とはいえアリだと思うのは、あくまで自発的に睡眠を削る人であって、ときおり見聞きする「短時間睡眠を他の人に押し付ける人」、これはなくなって欲しいものだなー、とつくづく思っております。
 
さて、自分にとってのちょうどいい睡眠時間は、どうやって見つければ良いのでしょう? 
以下を参考にしてみてください。
  1. 昼間に、眠くなく元気に動ける(ただし、午後2時頃、仕事に支障が出ない程度に眠くなることは許容範囲)
  2. 朝、目覚ましにや家族に頼らなくてもすっきり起きられる
  3. 休みの日でも、平日より遅くまで寝たい気分には特にならない
 
この3つが満たせているなら、睡眠時間は十分に足りていると思いますよ!
 
なお、ずっと睡眠不足だった人だと、睡眠時間を長くしてもすぐには効果が出ないことがあります。足りているかどうかは、最低2週間、同じ睡眠時間での生活を続けてから判定しましょう。