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眠りの科学とワタシの生活

睡眠関係のネタを、睡眠の専門医である2児のママが書いてます。

中高校生の就寝時間を親が早めに設定してあげることが、うつの予防になるらしい

子どもの睡眠
子どもを持つ親ならば、きっとほとんどの方が、自分の子どもがニコニコと元気に生活することを願っていると思います。
 
しかし、思春期は、子どもの内面に嵐の吹き荒れる時期。子ども気分が落ち込んでうつ状態となったり、自殺を考えたりするのも決して稀なことではありません。
子どもの笑顔を守るために、大人が出来ることとはいったい何でしょうか?
 

親が子どもの寝る時間を決めることが、中高生のうつや自殺念慮を予防する

今日ご紹介する論文は、2010年に、睡眠医学では権威ある雑誌であるSLEEPに発表されたものです。
 
その研究では、アメリカの中高生(7-12年生)15000人とその保護者に対して、アンケート調査が行われました。
 
保護者に対しては、子どもが寝る時間を決めているか、決めているとしたら何時台か、ということを尋ねました。
 
中高生本人に対しては、CES-Dという抑うつ状態を調べる20問の質問を行い、一定の点数以上を「うつあり」と判定しました。また、「最近12カ月の間に、真剣に自殺を考えたことがありましたか?」という質問に対し「はい」と答えた子を「自殺念慮あり」と判断しました。
 
自殺念慮とは、「自殺したい」という考えが頭の中にある状態のことです。必ずしも自殺願望というほど強くはありませんが、十分に危険信号であることは言うまでもありません)
 
また、ふだんの睡眠時間、十分な睡眠をとれているか、親が気にかけてくれていると感じているかどうか、などの質問も本人に対して行われました。
 
 
結果は、
親が決めた就寝時間が0時以降もしくは就寝時間が決められていない子では、
就寝時間が10時以前の子と比較して、
うつ症状のある割合が24%高く、自殺念慮のある割合が20%高い
というものでした。
 
これは、年齢や性別、家の経済状況や、「親が気にかけてくれているか」などの変数もi調整したあとの数値です。
 
また、抑うつ状態の子や自殺念慮のある子は、就寝時間が遅く、睡眠時間が短い傾向があることもわかりました。
 

短時間睡眠→うつの因果関係に関して、ツッコんだところが気になる人への説明

この研究のおもしろいところは、「親が子どもの就寝時刻を何時に決めているか」という視点を、睡眠時間と抑うつと因果関係を解明するためにもちいているところです。
 
子どもの睡眠時間やと抑うつ症状や自殺念慮が関連しているという研究成果は、この研究の前にもありました。でも、うつの前兆として睡眠不足が出る場合もあるので、それまでの研究結果だけでは、短時間睡眠である結果としてうつが生じるということが、言いきれなかったのです。
 
でも、親の決める就寝時間は、子どもが抑うつ状態であるかどうかということの影響を受けにくいと考えられます。そして意外にも、親が決めた就寝時間を、子どもはおおむねきちんと守っているらしいのです! 子ども本人の報告による就寝時間は、親が決めた就寝時間より、平均してわずか5分後ということでした。
 
したがって、親が子の早めの就寝時間を決めることは、子の睡眠時間を伸ばし、十分な睡眠時間をとれるようにする働きがあるのではないか、引いてはそのことによって、うつや自殺念慮のリスクが減るのではないか、と考えられるわけです。
 
中高生の年齢ならば、寝る時間の自己管理をさせた方が良いのではないか、と自立に向けた配慮をするのも立派な親心です。
ただ、この年代の子どもは、本人にまかせておくと、だいたいにおいて、遅めに寝て睡眠不足となってしまう傾向があるようなのです。
多少口うるさいと思われても、就寝時間を早めに設定して、なるべく守るように働きかけることが、結局は子どもが笑って楽しく過ごせる日々のために役に立つようですよ。
 
参考文献:
Gangwisch JE; Babiss LA; Malaspina D; Turner JB; Zammit GK; Posner K. Earlier parental set bedtimes as a protective factor against depression and suicidal ideation. SLEEP 2010;33(1):97-106.