眠りの科学とワタシの生活

睡眠関係のネタを、睡眠の専門医である2児のママが書いてます。

長時間睡眠の人は、病気のリスクや死亡率が高い傾向はあるけれど…

数々の疫学研究で、長時間睡眠(だいたい9時間以上くらい)の習慣がある人は、色々な病気などのリスクが高いという結果が出ています。
 
なぜそうなるのでしょうか? そして、すでに長時間寝ている人は、この結果をどう考えればいいのでしょうか?
 

長時間睡眠で健康状態が悪くなる人が多い理由

この相関の理由は、はっきりとわかっていませんが、仮説はいくつか挙げられています(参考文献は文末)。
 
長時間睡眠→健康状態が悪くなる仮説
  • 長時間睡眠だと睡眠が分断されやすい。それが体に悪い
  • 長時間睡眠が免疫機能に悪影響を与える
  • 長い時間を暗い空間で過ごすことが体内時計に影響を与える?
  • 長い時間を寝床で過ごすと、運動とか、熱とか、重力とか、そういうストレスが減るのがかえって良くない?

健康状態が悪い→長時間睡眠になる仮説
  • 疲れると長時間睡眠になりやすい。
  • 何か病気にかかっていると睡眠時間が伸びる。
 

すでに長時間寝ている人は、どうしましょう?

ただ、わたしとしては、すでに9-10時間寝ていて、なおかつそのくらいの睡眠時間が必要だと自覚している人は、無理に睡眠を削らない方がいいんじゃないかと考えています。
 
長時間睡眠で悩むひとりひとりとお話していて思うのは、「長く寝なきゃいけない人が、意志の力とか外圧で睡眠時間を縮めるのは結局無理がある」ということです。
 
長く寝なきゃいけない人には相応の理由があるのです。「長時間睡眠だと健康状態が悪い人が多い」というのが疫学データ上では明らかであるからといって、「じゃあ、もっと寝ている時間を減らそう!」としても、結局破綻する可能性が高い。
まあもちろん、それでうまくいけばいいんですけどね。
 
こういうデータがあるからといって、長時間睡眠者の周囲の人が長時間睡眠を責めるネタにはなってほしくないな、と希望しています。
 
参考文献
Cappuccio FP, D’Elia L, Strazzullo P, Miller MA. Sleep Duration and All-Cause Mortality: A Systematic Review and Meta-Analysis of Prospective Studies.Sleep. 2010;33(5):585-592.