眠っている間に食べている ~睡眠関連摂食障害の話
朝起きると、食べた覚えのないポテトチップの空袋が転がっている。
一人暮らしなのに、知らない間に使った痕跡が台所にあり、よくわからない料理が食卓に乗っている。
食事制限が厳しいダイエットを送っているのに、気がつくと冷蔵庫の食べ物がどんどん減り、腹回りが増えている―。
このような話に、身に覚えはありませんか? あったら、それは、睡眠関連摂食障害(sleep related eating disorder)かもしれません。
眠っている間に起き上がって、飲み食いしたり、料理したりという行動が特徴の病気です。
眠っている間のことなので、ふつうは本人は、そのような行動をとっていたことを覚えていません。
睡眠関連摂食障害による問題は、以下のようなものがあります。
ひとつは、怪我のおそれがあること。なにしろ、眠っている間に包丁を使ったり火を使ったりするわけですから、危ないのです。
ある高齢の女性は、「朝起きたら卵焼きが焼けていた」と話されました。無事に済んでいるから良いようなものですが、下手するとご本人がやけどを負ったり、家が火事になったりする危険があります。
もうひとつは、体重増加。自覚がない間に食べるので、起きているときのように「ほどよいところで我慢する」ことが難しいのでしょう。しかも、睡眠中の食べ物として、高カロリーなものを選ぶ人がなぜか多いようなのです。結果、体重が増え、糖尿病や高血圧などの肥満に関連した病気が悪化する人も少なくありません。
さらに、飲食により睡眠が分断されることで、昼間の眠気が出るという場合もあります。
ただし、病状によっては、すでに飲んでいる薬をとてもじゃないけど減らせないという場合もあります。そういう場合は、ある種の抗けいれん薬を使っていただくことで、夜間の摂食行動が抑えられる可能性があります。