眠りの科学とワタシの生活

睡眠関係のネタを、睡眠の専門医である2児のママが書いてます。

居眠りをよくする人に、「やる気がない」とは、専門医のわたしは思わない

 眠気とやる気の関係について、どう言えばいいのか、ずっともやもやしていました。
 本ブログに対していただいたコメントに対して回答したことをきっかけとして考えがまとまったので、書いておきます。
 なお、この内容は、これまでの診療の経験などから生じた個人的な見解であり、根拠となるような定量的なデータはないことをお断りしておきます。
 
 さて、眠気をコントロールできないことは、やる気の問題と捉えられがちです。
 眠気の強い人と話していると、「眠いのはやる気がないからだと言われた」という話を本当によく聞きます。
 
 たしかに、眠気とやる気は結びついています。退屈な授業は眠くなる、好きな教科や面白い話なら眠くならない、そういう体験のある人は多いことでしょう。
 眠気の強い人であっても、強い興味を持てることであれば、なんとか起きていられるということはめずらしくありません。
 
 しかし、だからといって、眠ってしまうのはやる気がない証拠、ということにはなりません。
 わたしが考えるのは、目を覚ましているために必要なやる気の量は、人によって違うのだろうということです。
 言い換えると、同じ量のやる気がある場合でも、もともと眠気のない人は起きていられるし、眠気の強い人は眠ってしまうというわけです。
 つまり、眠気の強い人が起き続けているためには、ふつうの人と比べて、何倍ものやる気が必要なのではないでしょうか。
 
 すぐ居眠りしてしまう人は、単純なやる気不足ではなくて、むしろ、眠っていない人の何倍ものやる気を出して、眠らないように頑張ろうとしている場合もあるのではないかと思います。
 
そもそも頑張りすぎて睡眠不足で眠くなっちゃう人って、少なくないですしね。部活に塾に遠距離通学のコンボとか。そういう人が、「居眠りしないように頑張ろう」というやる気だけがないわけがない。
 
それを「眠るなんてやる気がない」と𠮟りつけるのは、筋違いではないかと感じます。
 
なお、もしも本当にやる気が足りないがために眠ってしまうという場合であっても、「やる気がない」と叱ることには、百害あって一利なしだと考えています。これについては、また別の機会に。