「早起き」はいいこと? その意外な落とし穴
「早起き」はいいこと、そう思っていませんか?
「早起きは三文の徳」と、昔の人は言っていました。最近では、「朝活」という言葉を、よく見かけますね。
子どもたちに対しても、文部科学省と「早寝早起き朝ごはん全国協議会」が連携して、「早寝早起起き朝ごはん」運動を平成18年から進めています。
参考:「早寝早起き朝ごはん」全国協議会
この活動の理念は素晴らしいし、科学的にも正しいです。
ただし、少し方向性を間違えると、「早起き」は、子どもたちにとって、かえって有害なものとなってしまうかもしれません。
少し前にそんな話を聞いたので、シェアいたしますね。
1万9千人のデータからの検証
わたしがその話を聞いたのは、2017年6月に開かれた日本睡眠学会の定期学術集会のシンポジウムでのことでした。話をされていたのは、小児睡眠の専門家として有名な神山潤先生です。
なお、神山先生は、全ての講演スライドを公式サイト上で公開されていますので、いまも講演内容を見ることができます。
参考:「子どもの睡眠覚醒リズムに何が起こっているか、どうすべきか?-早寝・早起き・朝ごはん運動は子どもに優しい?-」
その講演の前半部で、神山先生は、平成26年度に日本学校保健会が19,219人の小中高生に行ったアンケート調査を基に、以下のように述べています。
- 小中高生の起きる時刻はこの20年ほどで早まっている
- しかし、寝る時刻は早まっていない。
- 睡眠時間は、むしろ短縮する傾向にある。
つまり、早起きが推進されていても、遅寝の傾向が変わらなかったことによって、結果として、睡眠時間が減ってしまっているのではないか!? ということを述べているのです。
早寝を伴わない早起きは、睡眠不足につながる
たしかに、眠気を訴えて病院に来るほど困っている子からも、「早起きを心がけている」とはときどき聞く話です。その眠気の背景には、明かな睡眠不足がある場合が少なくないのに。
良かれと思って実行してきた早起きが、逆に生活の質を悪化させてしまうのですね。
睡眠不足が望ましくないことは、このブログでも、すでに何度もお伝えしてきた通りです。
慢性的な睡眠不足になった子どもは、勉強でも運動でも、自分の持つ力を十分に発揮できません。イライラしやすくなり、気分も落ち込みやすくなります。
「早寝早起き朝ごはん」、この全部がちゃんと実行されていれば、睡眠時間は変わらないはずです。でも、結果として早起きばかりが推進され、「早寝」は置き去りになりやすいようです。
そうなったのは、「早寝早起き朝ごはん」のうち特に「早起き」が、「早起きは良いこと」という昔ながらの日本人の価値観とマッチしたためなのかもしれません。
でも、早寝を伴わない早起きは、睡眠不足につながるため、かえって健康への悪影響が出てくるおそれがあるのです。
「早起き」は「早寝」とセットで、と心がけましょう。