眠りの科学とワタシの生活

睡眠関係のネタを、睡眠の専門医である2児のママが書いてます。

睡眠不足の方が風邪をひきやすいことを証明した実験の話

急に寒くなったこの時期、風邪をひきやすいですね! 

我が家では、長男が先週高熱を出し、その後、わたしや夫も似たような風邪になりました。いま気になるのは、まだその風邪にかかっている様子のない次男のこと。長男のように急に高熱を出すのではないか…? と、日々心配しています。
 
さて、睡眠時間が短い方が風邪をひきやすいというのは、経験的に知られているところではありますが、そのことを検証したおもしろい実験の論文を発見したので、ご紹介します。(参考文献は文末に記載しています)
 
この研究は、2000年から2004年にかけて、アメリカで行われました。
21歳から55歳の健康な男女153人が参加しました。アメリカでは、新聞の広告欄でよく実験の被験者を募集しているのですが、この人たちもそうやって集められたようです。被験者への謝礼は800ドル。800ドル×153で、被験者へのお礼だけでも相当なお金がかかっているな…と、つい計算してしまいますね。この資金力の豊富さ、さすがアメリカです。
 
実験は、だいたいこんな流れで進んだようです。
・まずは健康診断。そこで、健康状態に問題の見つかった人は、参加をお断りする。
・2週間連続で、前の晩の睡眠時間や、何か睡眠に問題がなかったかなどについて、電話でたずねる。
・2週間の電話面談終了から1週間ほどおいてから、実験室に来てもらい、風邪症状を引き起こすライノウイルスを鼻から投与する(!)
・その後、隔離された場所に5日間滞在して、風邪の症状が出てくるかどうか観察する。
 
風邪の症状を毎日どうやって測ったかというと、鼻水とか咳とかのどの痛みとかのいろいろな自覚症状があるかどうか、5段階で点をつけてもらうというのと、あとは、鼻水の量の測定。鼻をかんだ紙を、その都度密封した袋に捨ててもらい、その袋の重さを測ることで、鼻水の量を測ったというのです! 
ほかに、鼻水の濃さを測る検査も毎日行ったようです。
 
そうやって実験を行った結果、153人の被験者のうち135人が、風邪を発症しました。
実験開始前に聞き出していた睡眠習慣と、風邪を引いたかどうかを照らし合わせて解析したところ、平均睡眠時間が7時間未満だった人は、8時間以上の人と比べて、風邪を発症する確率は2.94 倍高かったそうです。
 
また、ベッドにいたのに眠れなかったという時間の長かった人も、ベッドにいる時間はほとんど寝ていたという人と比べて、風邪を発症した人が多かった( なんと5.5倍も)ということでした。
 
わたしの場合、子どもが0歳時の頃の冬は、ものすごく風邪をひきやすかったです。夜中に子どもの世話をすることによって、睡眠の量と質が同時に低下していたことが、風邪のひきやすさと関係していたのかもしれませんね。
 
参考文献:
Sleep habits and susceptibility to the common cold.
Cohen S, Doyle WJ, Alper CM, Janicki-Deverts D, Turner RB.
Arch Intern Med. 2009 Jan 12;169(1):62-7. doi: 10.1001/archinternmed.2008.505.