読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

眠りの科学とワタシの生活

睡眠関係のネタを、睡眠の専門医である2児のママが書いてます。

睡眠時無呼吸症候群がある人で、突然死の危険はどのくらい上がるのか

夜中に息が止まって、そのまま死んでしまうということはあるのでしょうか?

 
最近、夫が睡眠時無呼吸症候群だという複数の方から、「夫の睡眠時無呼吸がひどくて、そのまま呼吸が止まってしまうのではないかと心配で、自分が眠れない」という訴えを聞きました。
 
たしかに、重症の睡眠時無呼吸症候群の場合、最長で1分や2分、呼吸が止まる人も珍しくありません。その呼吸停止を目撃する家族の人が、「このまま呼吸を再開しなくなるのではないか」と気が気でなくなるのも、無理もないことです。
 
実際のところ、睡眠時無呼吸が直接の原因となって窒息死したという事例は聞いたことがありません。
ただし、心臓が原因で、夜間の睡眠中に突然死すること自体は、たまに起きることです。そして、睡眠時無呼吸症候群は、心臓に悪影響を及ぼす病気です。そういう意味では、睡眠時無呼吸がある人の方が、ない人に比べて、就寝中の突然死は増えそうです。
 
では実際にどの程度、危険なのでしょうか?
それを考える上で、参考になるかもしれない研究を紹介します。(参考文献は文末)
 

睡眠時無呼吸症候群があると、心臓突然死のリスクはちょっと上がる

この研究では、米国のメイヨークリニックの睡眠センターを、1987年から2003年のあいだに受診して、終夜睡眠ポリグラフ検査を受けた人を対象としました。
そして、検査後の数年間で、心臓が原因の突然死が生じたかどうか、死亡証明書や病院の記録などを追跡しました。追跡した期間は、1人あたり、平均5.3年分です。
 
すると、研究で参加した10701人の中から、142件の心臓突然死が発生したことが、確認されました。(これは、そのまま死んでしまった人だけでなく、蘇生された人も含めた数値です)
全体では、1人あたり、1年間に心臓突然死に陥るリスクは0.27%という計算になります。これは、何かしら病気のある人も、検査を受けたというだけでそれ以外は特に持病のない人も含めた結果です。
 
睡眠時無呼吸症候群があれば、たしかに、心肺停止になる危険は上がります。
無呼吸低呼吸指数、すなわち1時間あたりの無呼吸と低呼吸が合計20回以上の人(ちょうど日本だと、CPAP治療を開始する基準を満たしている人たち)が心停止を起こすリスクは、無呼吸低呼吸指数が20未満の人の1.6倍でした。

研究結果をもとにして考えてみた

この研究ではそこまで言及されていませんが、わたしの意見として、無呼吸低呼吸指数が40とか60とかある重症の方では、もっとリスクは上がることでしょう。
それでも、論文に載っている他の数値も踏まえた印象として、重症の睡眠時無呼吸症候群における心肺停止のリスクが、睡眠時無呼吸のない人の10倍を超えることはあるまいと思われます。
なので、大げさに見積っても、重症の睡眠時無呼吸症候群がある人が心肺停止を起こすリスクは年3%程度かなと思います。
その場合、365で割って、1日あたりのリスクは、0.01%以下になります。
 
1日あたりのリスクが0.01%というのは、同じ日に呼吸が止まっている重症の睡眠時無呼吸症候群の患者さんが、1万人いたとして、そのうち1人が突然の心停止に陥るという意味ですね。
 
そして、今回紹介した研究では、1日のうちどの時間帯で心停止になったかどうかは問題にしていないので、睡眠中の突然死の危険は、この数字よりさらに低くなります。
また、日本人と比べると、米国人の方が心臓病の危険が高い傾向があるので、もし日本人で同様の調査をしたら、より低い数値となる可能性が高そうです。
 
ただし、この研究では、心臓突然死だけを調べているので、他の原因による死亡も含めたら、亡くなる可能性自体は当然もっと高いです。あくまで、予想外に突然亡くなる確率というところですね。

結論:(たぶん)今晩は大丈夫

数字をどうとらえるかの価値観は人それぞれですが、わたし自身は、今回計算してみた数値、つまり、いびきと無呼吸の激しい夫が、奥さんを悩ましているまさにその晩にそのまま亡くなってしまうという危険は、 それほど高くないんじゃないかと思います。
 
毎日の積み重ねによって、いつかは…という危険は、まあそれなりにあるとしても、今晩はまだそのときではない、という可能性の方がずっと高いということです。
 
それよりは、息が止まらない夫を心配して夜眠れないことによる、奥さんの健康への悪影響の方が、わたしは心配です。
 
夫が病院に行って治療を受けるよう、起きている間にしっかり説得することを心に決めて、夜はぐっすり眠られるのが一番ではないでしょうか。
 

注意

なお、今回の話は、あくまで、睡眠時無呼吸と突然の心停止の関係について述べているだけなので、睡眠時無呼吸を放置していいと言っているわけでは、決して、ありませんよ。
 
家族の人に心配されるほど長時間息が止まっている人は、重症の睡眠時無呼吸症候群である危険が高いです。
重症の睡眠時無呼吸症候群を放置することは、高血圧や不整脈、心疾患や脳卒中などさまざまな病気の危険が、明らかに増えることにつながるので、どうかしっかり治療は受けてくださいね。
 
参考文献:
J Am Coll Cardiol. 2013 Aug 13;62(7):610-6. doi: 10.1016/j.jacc.2013.04.080. Epub 2013 Jun 13.
Obstructive sleep apnea and the risk of sudden cardiac death: a longitudinal study of 10,701 adults.
Gami AS1, Olson EJ, Shen WK, Wright RS, Ballman KV, Hodge DO, Herges RM, Howard DE, Somers VK.