居眠りする人の人格を責めるのは、正しくないし得でもない
「居眠りしていたら、やる気がないのかと怒られた」
「怠けていると言われた」
睡眠障害の診療をしていると、こんな話をよく聞きます。
この問題に関して、言っておきたいのは2点。
1.居眠りしている人が、やる気がなかったり、怠けていたりするわけではない。
2.人格を責めても、だれの得にもならない。
1.居眠りしている人が、やる気がなかったり、怠けていたりするわけではない。
眠気を起こす原因の代表は睡眠不足ですが、睡眠不足ひとつとっても、問題はけっこう複雑です。まず、必要な睡眠時間の個人差が大きいです。また、睡眠時間をちょっと削った場合に眠気が出るのかどうかというあたりにも個人差があります。さらに、眠気にどのくらい耐えて起きていられるかという面にも個人差があります。この個人差は、個々人の身長の違いくらいに当たり前に存在する違いで、本人の努力によって変わるものでもありません。
要するに、本人の努力とは関係のないところで、居眠りしやすいかしにくいかは決まってくるのです。やる気によっても眠気は左右されますが、それは、居眠りするかどうかを左右するたくさんの要素のひとつでしかありません。
そこを考慮せずに、居眠りしてしまう人に対して、「やる気がない」と決めつけるのは極論にすぎるのです。
2.人格を責めても、だれの得にもならない。
眠気と戦うのは、それなりに苦痛なものです。また、居眠りするほど眠い人は、眠気によって集中力や思考力も低下しています。さらに、居眠りした結果として、勉強や仕事がはかどらないという損失を、一番に引き受けていかなければいけないのは本人です。
すなわち、居眠りを頻繁にしてしまうという時点で、すでに本人はハンディキャップを負っており、しんどい状況なのです。
その上、「やる気があれば起きていられる」「怠けているんだろう」「努力が足りない」などの言葉をくりかえし投げつけられると、どうでしょう。
どんどん、自分に自信を持てない人になっていってしまうのですね。
そうすると、ますます仕事や学業がうまくいかなくなり、気分も落ち込んでいってしまいます。その人の生産性は下がるばかりです。ひいては休職・退職につながる場合もあります。
そうやって居眠りする人を排除していったら、長期的には、残された人の負担が増えるばかりです。
また、居眠りしていたのが子どもだった場合、親や先生は、子どもの自己肯定感をわざわざ損ないたくて、「やる気がない」などと注意したはずはないですよね。
まとめ
居眠り行為そのものを、見て見ぬふりをしろとはいいません。
居眠りしたために授業内容が理解できていない。あるいは、居眠りしていたせいで作業が遅れている。
そのように居眠りによってなんらかの実害が出ているとき、そのことを穏やかに本人に説明し、居眠りが問題であることを認識させ、なんらかの対策を講じてもらうよううながすのは、正当なことだと思います。
ただ、そんなときに、居眠りの原因を本人の人格の問題と考えたり、そのようなことを本人に面と向かって言ったりしないでほしいのです。