「睡眠時間を90分の倍数にする」のは、やめた方がいいと思う理由
「睡眠時間を90分の倍数にすると良い」という話をよく目にします。
睡眠の専門家を名乗っている人の中にも、そう言う人がいます。
でもわたしは、「論理的に考えてそれは違うだろう」と思っています。
なぜでしょうか?
「睡眠は90分の倍数が良い」派の意見の挙げる理由は、だいたい以下のようなものです。
- 睡眠は、「レム睡眠」と「ノンレム睡眠」がセットになっている。
- その1周期は約90分である。
- サイクルが終わる頃、すなわちレム睡眠期に目を覚ますと目覚めが良い。
- ゆえに、睡眠時間を90分の倍数にすれば目覚めがよい。
1~3までは、事実です。
ただ、結論の4に飛ぶところで問題があります。
睡眠の周期は「約90分」なのであって、「きっかり90分」ではないからです。
睡眠の教科書"Principles and Practices of Sleep Medicine 5h edition"には、以下のように記されています。
- 一晩の初回のノンレム睡眠~レム睡眠のサイクルの長さは約70-100分
- 2回目の長さは90~120分
- 一晩の平均をとると、1回あたり約90~110分
きっかり90分のサイクルを3回繰り返すならば4時間半後目覚めればいいわけですが、たとえばそのサイクルが100分の場合は、4時間半後は、まだ3回目のサイクル終了30分前です。
同様に考えると、6時間後、7時間半後が、「サイクルの終了期」にあたる可能性は低いです。
もっとも、朝に近づくほどレム睡眠は増えるので、「90分の倍数」で寝て、レム睡眠の時期に目が覚める確率自体はそれなりに高いと思いますが。
わたしなぞは、10代の頃はこの説を真に受けて、「6時間半寝ると目覚めが良くなくなってしまうかもしれないから、6時間後に起きるようにしよう!」などとやっていました。
でも、今になってみると、これが、あえて睡眠時間を減らす根拠とするほどの説だとは思えません。
何かの参考にしていただければ幸いです。