眠りの科学とワタシの生活

睡眠関係のネタを、睡眠の専門医である2児のママが書いてます。

やせれば睡眠時無呼吸は治りますか?

答え:人によります。
 
目次
1.太っている方が、睡眠時無呼吸症候群になりやすいのは確か
2.やせていても睡眠時無呼吸症候群になりやすいタイプがある
3.やせることで睡眠時無呼吸が治る人もいる。やせても重症の睡眠時無呼吸のままの人もいる
 

1.太っている方が、睡眠時無呼吸症候群になりやすいのは確か

睡眠時無呼吸症候群は、寝ているときに、空気の通り道がふさがれて、呼吸ができなくなるという病気です。
なぜ、太ると睡眠時無呼吸症候群になりやすいかというと、太ることで脂肪が気道の周囲にも蓄積し、外側からノドをふさいでしまうためです。起きているときは気道を開けていられるのですが、眠って体の力が抜けた状態になると、脂肪の重みにノドが抗しきれなくなって息が詰まるこということが起きるのですね。
 
ただし、どのくらい太れば睡眠時無呼吸症候群になりやすいかということには、大きな個人差があります。
相撲取りのように立派な体格であっても睡眠時無呼吸のない人もいれば、どう見ても痩せてヒョロヒョロなのに、一時間あたり数十回も呼吸が止まっているという人もいます。
 
その違いは、主に、顔の骨格のつくりから来ています。
 

2.やせていても睡眠時無呼吸症候群になりやすいタイプがある

睡眠時無呼吸が起きやすい顔だち(頭蓋骨のかたち)と、起きにくい顔だちというものがあります。
たとえば、以下のような人は、睡眠時無呼吸症候群になりやすいです。
・顎がきゃしゃな人
・下顎が後退している人
・頭蓋骨が細長い、弥生系の顔だちの人
 
逆に、
・欧米人並みに顎ががっしりしている人
・下顎が前に出ている人
・頭蓋骨のかたちが立方体に近い、縄文系の顔だちの人
は、太っても、睡眠時無呼吸症候群になりにくい傾向があります(ならない、というわけではありませんよ!)。
 
日本人などのアジア人は、白人や黒人に比べると、太っていなくても睡眠時無呼吸症候群になる人が多いと言われます。それは、上記のような顔だちの違いが、一因なのです。一般的に、白人や黒人の方が、日本人より顎ががっしりとしてたり、立方体に近い顔だちをしていたりしますからね。
 
まあ、もっとも、顔を見ただけでは、その人の睡眠時無呼吸の重症度は判断できないのが、少なくともわたしにとっては正直なところです。顔だちはあくまで参考情報であり、実際のところどうなのかはは、結局、検査をしてみないことには、わかりません。
 
病院にかかった方が良いかどうかは、以下の記事も参考にしてください。

3.やせることで睡眠時無呼吸が治る人もいる。やせても重症の睡眠時無呼吸のままの人もいる

さて、最初の疑問に戻ります。
やせると睡眠時無呼吸症候群は治るのでしょうか?
 
ここまでお読みくださった方ならわかるでしょうが、やせたら睡眠時無呼吸症候群が治る人というのは、もともと睡眠時無呼吸症候群になりにくい顔だちの人です。もともと睡眠時無呼吸症候群になりやすい顔だちの人だと、たとえやせても、依然として治療が必要な程度期睡眠時無呼吸が残る可能性が高いです。
 
ただ、やせたら本当に睡眠時無呼吸がよくなるか、そうでもないのか、実際にやせられた段階で再検査してみなければわかりません。
 
すでに睡眠時無呼吸症候群と診断して治療中の患者さんである場合、診断されたときの体重より、5%くらい体重が減った状態をキープできたら再検査してみることを、わたしはおすすめしています。つまり体重90kgの人なら4.5kg、60kgの人なら3kg減ったら再検査、です。
そのときに、体重を減らす前と比べて明らかに睡眠時無呼吸が良くなっているようであれば、減量が効くタイプだとはっきりわかります。そのくらい体重が減っても睡眠時無呼吸の程度にほとんど変わりがないようであれば、残念ながら減量は効きにくいタイプ、という判断となります。
 
やせる前の検査データがある方が、睡眠時無呼吸に対する減量の効果が正確に見極められます。なるべく病院に行きたくない、CPAP治療とかしたくない、という方でも、減量前の段階で一度は検査して、減量前にどのくらい悪かったか、数値で把握しておくことをおすすめします。
 
参考文献:
睡眠呼吸障害(SDB)を見逃さないために (佐藤 誠)
診断と治療社 (2010/06)