眠りの科学とワタシの生活

睡眠関係のネタを、睡眠の専門医である2児のママが書いてます。

『極論で語る睡眠医学』と、そこに寄せられた感想が面白かった

『極論で語る睡眠医学』という本を読みました。
睡眠医学の分野にはこれまでありそうでなかった本で、大変面白かったです。

何がいいかというと、シリーズタイトルでもある「極論」にあたるかと思いますが、著者のキャラクター、体験、意見が文中にむんむんにじみ出ているんですよね。
 
そのように著者のキャラクターがにじみ出る医学本は、ちょっと間違えるとトンデモ科学の方向へ進んでしまう危険があるのですが、この本の場合、内容の科学的な公正さは保たれているように思われます。
 
まっとうな専門医による本は、往々にして中身が堅苦しくて読みにくいという弱点がありがちなのですが、この本はその問題を、上記のように著者の意見を全面に押し出すことと、イラストを多用した構成によってクリアしていると思います。
 
研修医が主な想定読者と思われますが、睡眠医学に興味のある医療従事者の方全般に、おすすめです。
 

そして、この本にamazonで寄せられたレビューが、また、興味深かったです。

小児科医とおぼしき、kamekurasanという方によるレビューです:

---(レビューからの引用はじめ)------
本書において、思春期児童の睡眠障害について触れた章の中で筆者はこう述べます。
「10代に朝型を強制するのは犯罪行為である」
これだ!と我が意を得た思いで打ち震えました。しかもエビデンスがある!
「朝起きられないのは甘え」「だらしない」「怠けるな」「しつけが悪い」「学校くらいいけないとだめだ」「こんなことでは将来真っ暗だ」・・・そんなことを言われて傷つき不安になり、さらに睡眠に異常をきたす思春期児童のなんと多いことか。もちろん甘えでも怠けでもしつけのせいでもありません。
読了後には自信を持って言えます、「起きられなかったら眠ってていいよ」と。
---(引用おわり)------

本ブログにおいて、今まで何度か、「居眠りしていると怠けていると言われる」問題について書いてきましたが、実は、「朝起きられない」睡眠障害も、同様の問題をはらんでいます。
すなわち、まさにこのレビュワーの方が書かれたように、「朝起きられないのは甘え」「だらしない」「怠けるな」…そう言われた子たちのなんと多いことか。そしてそのように言い放つのは、上にも指摘されているように、まったく本人のためにならないことなのです。

わたしのように睡眠障害を診ることを専門とするものだけでなく、やはり小児科医の先生も同様の現象を目撃していらしたのだとわかりました。分野が違っても同じ体験をしていたという意味ではうれしいような、睡眠障害の当事者の方を思うと残念なような…。